おもかげ
浅田 次郎
商社マンとして定年を迎えた竹脇正一は、送別会の帰りに地下鉄の車内で倒れ、集中治療室に運びこまれた。 今や社長となった同期の嘆き、妻や娘婿の心配、幼なじみらの思いをよそに、竹脇の意識は戻らない。 一方で、竹脇本人はベッドに横たわる自分の体を横目に、奇妙な体験を重ねていた。 やがて、自らの過去を彷徨う竹脇の目に映ったものは――。